現在でも一部でコアなファンがいるジルオールの名を冠したアクションRPG。
ストーリー的には元祖ジルオールの前日譚という形になっている。
元祖はマルチシナリオを売りとしたRPGだったが今作は無双シリーズで有名なωフォースが開発を担当しており、ゲームシステムは全く別物となっている。
何年も前から開発していることは明らかになっていたがなかなか発売日が決まらず、延期を重ねての発売となった。
筆者は「ジルオール？聞いたことはあるけどよくは知らんなぁ」という人なので注意。
評価できるところ
全体的に実に丁寧に作りこまれている印象。バグも見つからないし、ゲームバランスについても完璧と言ってよい調整。
世界観、ストーリー、共に王道と言ってよい。元祖ジルオールプレイヤーの方が楽しめるんだろうとは思うが、別に知らなくても困らない。
戦闘アクションについて人によって求めるものが違うと思うが、これはこれできれいな形に仕上がっていると思う。
ダンジョンごとに異なる地形を活かして戦うスタイル、アイディアは素直に賞賛できる。
全体的にロードなどによるストレスが小さく、サクサクプレイできるのはいい。個人的には最高だ。
評価できないところ
評価できるところの裏返しになってしまうが、王道過ぎて地味というか、斬新さに欠ける部分があるのは否めない。
油絵っぽいグラフィックを目指したということなのだが、個人的にはわざわざグラフィックを薄汚くしているようにしか感じなかった。少なくとも戦場のヴァルキュリアのような感動はなかった。
やり込み要素がありそうであまりない。これはやはり痛い。隠しダンジョンのアレもただダルいだけなんでもうちょい工夫が欲しかったというのが正直なところ。
ボス戦はどうしてもガン待ちで同じような手順で戦うことが多いので、いまいち楽しくないところがあるのは確か。
スキルパレットが２パターンしか使えないなら、やはりR2を押すごとにパレット切り替えよりR2を押したままスキル選択で使用スキル切り替えのほうが良かったと思う。
スイッチコンボの仕様はどうも取ってつけたような感がある。もう一工夫必要だったのではないだろうか。
パケ絵とキャラデザでかなり損をしている感がある。渋いというか硬派というか…それが損になる…寒い時代だと思わんか。
もう少し雑魚敵を倒す意味や価値があってもいいだろうとは思う。ただ雑魚掃除必須になるとダルくなるだろうし難しいところだが…。
評価できないかどうかは微妙だが、フゴーの館におけるミニゲームで遊んでコインを増やすよりも、直接お金でコインを買いまくるほうが圧倒的に効率よくコインを増やせるというのはなんとも…まぁ楽でいいんだけどさ…。
結果論な意見であることを承知で言うが、多少バランスやストーリーがおかしくてもいろんなキャラやソウルをある程度自由に使えたほうが良かったのかなと思うところはある。
補足・備考・解説・その他
結論から言えばこのゲームは良いゲームだ。
万人にオススメできるゲームだと思う。
それだけに初週売上が『ととモノ。３』のPS３版より低いというのは正直悲しい。
日本のゲーム市場はジワ売れというのもなかなか期待できないのでね…。
良くも悪くもあまりに丸く仕上がりすぎているんだよね…。
「実に嘆かわしい事に」と表現していいと思うんだが、もしこのゲームのキャラデザが『超次元ゲイムネプテューヌ』みたいな気持ち悪さ（褒め言葉）だったらバカ売れしてたんじゃないかと思ってしまうんだ。
自分で書いてて悲しくなるよ、日本ゲーム市場の現状に。
真面目に良いゲームを作るより、『ととモノ。』シリーズみたいにバグまみれでバランス未調整の未完成品を萌え絵師起用で売りつけるほうが遥かに売れるって証明してしまったんだ。
そりゃあコーエーの宣伝、広報の悪さも指摘されるべきだと思うし、GT５、テイルズオブグレイセス、MHP３とほぼ同時期に発売日が重なったのもキツかったと思う。
それでもこのゲームの出来と売上はあまりにも不釣合だと言わざるをえない。
なんでなんだろうな…僕はコーエーの関係者でも株主でもなんでもないけど、開発スタッフのことを想うと涙が出そうになるよ。
こういう事は決して珍しいことではないけれど、こういうことが起こるたびに悲しい気持ちになる。
「よくあることだ」と軽く流せるほどドライな感情でいられないってこと。
開発スタッフには「いくらデバッグやバランス調整を丁寧にやったって何の意味もないんだな」と思って欲しくない。
僕は開発スタッフがこの『トリニティジルオールゼロ』という全く売れない作品を世に送り出したことを胸を張ってほしいとすら思う。
それは資本主義社会における一企業、一社員としておかしなことかもしれない。
だけど、一人間として誠実な仕事をしたんだから、世の中の評価がどうであろうと、そのことは誇っていい。
なんかゲームと直接関係ない話になっちゃったけど、それぐらい言ってもいいゲームだと思ってるんだよね、僕は。
上で細かい不満点をだらだら並べているので、「イマイチな出来なのかな」と思う人もいるかも知れないが、どちらかと言うと「次はこんな風にがんばったらどうかな」という程度のもので、「修正パッチ出せよ」というようなものじゃない。
発売前は「地形を利用した戦いってうまくいくのかな」と疑問に思う部分もあったのだが、実にうまく表現されているし、ゲームとして機能していると思う。
欲を言えばセレーネにももっと地形を活かした戦い方が欲しかったなと思う部分もあるけど、んなこと言ってたらキリがないからね。
あとダグザの石柱はもうちょい拾いやすくしてほしかったね。いちいち倒さなくても、直接ぶっこ抜けばいいじゃんと思うんだがねぇ。
ジルオールという世界観を持ってきたのは…判断が難しいところだ。やはり功罪あると思うよ、これはね。
もし次の機会があるのなら、完全に新しい世界でやってみて欲しいという希望はある。
新規タイトルというのは勇気がいるんだろうが、根本的にジャンルが違うゲームを無理に続編物、シリーズ物としてこじつけるのもね。
ジルオールがFFやDQぐらい影響のあるメジャーなタイトルなら別だけど…。
マルチシナリオとまではいかなくても、成長システムなんかはもうちょい多様性があっていいだろうと思う。
モーションを増やしたりバランス調整したりするのが大変になるとは思うが、クラスはある程度プレイヤーが自由に選べるような形のほうが良かっただろう。
スキルのパワーアップもただ３段階に分けるんじゃなくて、スパロボの武器のように攻撃力や攻撃範囲なんかを個別に強化できたほうが良かったと思うけどね。
パワーアップしたらもっとモーションやエフェクトがダイナミックに変わってほしいというのもあるね。
バンナムみたいにアホみたく有料のDLCを出さずに無料でDLC（クエスト、コスチューム、新規ダンジョンも）を配信してるのはすごいな。
バンナムはガンダムもテイルズもDLCのリストを見るだけで吐き気するぐらいひどい商売してるよな。
まぁガンダム無双はコーエーも絡んでるけど、発売前から有料DLCの内容を発表しちゃうっていうのはなかなか消費者をイラッとさせるものがある。
「あえて最初からは入れずに別途お金を払って買ってもらいます＾＾」ってことだからね。
北斗無双のDLCも相当アレだったが…版権が絡むといろいろあるのかねぇ。
んー…皮肉なことだけれど、やっぱりよく出来ているゲームは書くことが少ないね。
僕は良かった部分を細かく見つけていちいち持ち上げるようなことは得意じゃないし、あまりそういうことを押し付けられても読む側は気に入らないんじゃないかと考えちゃう。
このゲームは「これがすごい！これはゲーム業界の革命だ！！」と言えるほど革新的な要素は少ない。
でも本当に丁寧に作られているよ。それがこのゲームの一番の魅力。
アクションRPGの比較対象として『ニーアレプリカント』を挙げる人もいるようだけど、個人的にはあのゲームより全体的なクオリティはこちらの方が圧倒的に上だと感じるよ。
ゲームの好みや感じ方によると思うが、あくまで個人的な感想だと『デモンズソウル』と同等の評価をこのゲームに与えてもいいと思っている。
と言ってもデモンズソウルのようにライトゲーマーにとっつきにくい難しいゲームというわけじゃないよ？
むしろ逆で、デモンズソウルは難しすぎるしアクションゲーム寄りすぎるから、もっとRPG寄りの、つまり最悪LVさえ上げればなんとかなるぐらいのアクションRPGが遊びたいと思う人にぜひオススメするよ。
ファイアボールの魔法が登場するRPGはたくさんあるけど、このゲームのファイアボールは最序盤からクリア後までお世話になる超重要スキルなんだよなー。
ダグザの投げも豪快で気持ちいいし、セレーネも分身とかいろいろあるんだけど、さすがに３つのスキル×２パターンしか設定できないんじゃどうしても少なすぎる。
個人的にはセレーネにも首刈り投げとかフランケンシュタイナーみたいなスピーディな投げ技欲しかったかな。
トリニティアタックはなんかただの儀式化してるから、もうちょい条件とかひねってもらったほうが良かった。
あれ、なんか褒めとこうと思ったのに不満点書いちまってる。
やっぱり好きになっちゃったんだろうなぁ、このゲームのこと。
ああー、こんな売上に終わっちゃったけど、次回作かそれに当たる作品が出てくれたらいいんだがなぁ。
あと、『ブレイドストーム』の続編もこっそり待ってますんでよろしくお願いします、コーエーさん。
もうぜんっぜん関係ないけど、今さら『伊忍道』の続編とか出してくれたら個人的にすごく期待するんだがなぁｗ
『太閤立志伝』もやっぱもう無理なの？『鋼鉄の咆哮』シリーズは？？
コーエーは無双ばっか作ってる場合じゃねーぜマジに。
でも無双以外のタイトルを作った瞬間、この売上だもんな…ホント悲しいよ。
これを読んでちびっとでも興味持った人がいたらこのゲームを買って遊んでみてくれ。
ゲームって、いや、お客様に提供する製品って常にこうあるべきだよなって思うぐらいの出来だから。
１０年後ぐらいにさ、「昔、『トリニティジルオールゼロ』っていう名作があったなぁ。全然売れなかったけど」って通ぶって語れるぐらいのゲームだと思うよ。
そしてネット上でそんな奴を見かけたらこう言ってやるのさ。
「お、隠れ名作ハンターが来たな。どうしたね？」
